はじめに
名もなきキャリアコンサルタントこと敬天愛人です。
現在開講中の
第19回キャリアコンサルティング技能検定2級試験対策講座。
www.careerlife.jp
この講座の中で、実技面接試験出題の仮想ロールプレイを実施し、
逐語録からカウンセリング技法などの確認を行っています。
さて、キャリコン2級を受験される方は、
こういったロールプレイを徹底的に練習されると思います。
でも、皆さんは自分のロールプレイを録音して聞いたり、
試験対策講座の先生に指導を受けたりはしていても、
文章に起こして添削されたことはあまりないのではありませんか?
案外、自分では気付けないものでして、
同じことを何回も言っていたりします。
マイクロ技法などの細かいカウンセリングスキルのチェックや
システマティックアプローチのカウンセリングプロセスを
きちんと踏んでいるかなどは、その場の相談支援や指導の会話だけで
確認しきれていないのではないかと思っています。
そんな皆様に、今回も仮想ではなく現実、
キャリア理論と実際のリアルなロールプレイをご覧頂いて、
試験やコミュニケーションに役立ててもらえたら幸いです。
※ロープレ内容につきましては、試験と全く同条件の表示はできませんので、
基本情報等は少し変更しておりますが、キャリアコンサルティングスキルの
確認という視点であれば、それほど違和感はないかと思います。
CL役はマツダさん、
CC役はスズキさん(仮名)
指導・添削は私でお送りします。
試験を受けない方でも相談を受けた時や
コミュニケーションなどに役立つスキルですから参考にして下さい。
では、行ってみましょ~う!!
相談事例
◆ケース4 マツダさん 53歳
相談者(以下CLと表記)
キャリアコンサルタント(以下CCと表記)
確認ポイント(以下KAと表記)
CL1
こんにちは。
CC1
本日担当するキャリアコンサルタントのスズキです。
CL2
あ、マツダです。
CC2
マツダさん、まず最初にお話をさせて頂くのですが、
我々キャリアコンサルタントは法律で規定されている
守秘義務というのがございます。
ここでお話されたこと外に漏れることはございませんので、
安心してお話ください。
また、今日はお時間20分です。
駅る限りお話をお伺いして行きますのでリラックスしてお話して下さい。
椅子の位置は大丈夫ですか。
ラポール形成(心の架け橋)は「冒頭」から
KA
このCC役の方は声の質・量が安定していて、聞き取りやすく、
少したどたどしさはあるものの良い雰囲気でスタートが出来たと思います。
コーヒーカップモデルのリレーションも、
ラポール形成とセットで覚えておきましょう。
【リレーション(関係構築)の基本「言語的スキル」】
- 受容
- 繰り返し
- 明確化(感情・意味の意識化)
- 支持
- 質問(閉ざされた質問・開かれた質問)
以上の5点をチェック!
※意味の分からない方は自分で調べた方が身に付きますし、
咀嚼できるようになるまで練習すると自分への素晴らしいGIFTになります。
CL3
はい、大丈夫です。
CC3
すいません時計の方こちらへ向けさせて頂いて大丈夫ですか
(はい、結構です)
ではマツダさん20分でお話を聞いて行きます。
よろしくお願いします、今日はどうされましたか。
「非言語的スキル」座る前に確認すること
KA
言葉遣いも全般的に丁寧で、
非言語的スキルも問題なく良かったと思います。
一方で、
ジェスチャー・・・というか手の位置が落ち着かない印象があるので、
ロールプレイ中にさすったりして細かく動かすとCL役も
気になってしまう可能性がありますので改善して行きましょう。
今回のロープレでは意識されて改善し、動きが減っていて良かったですね。
そういうクセがある方は第三者に客観的に評価をしてもらうか、
自分を録画して確認してみるのもいいかもしれません。
【非言語的スキル】
- 視線
- 表情
- ジェスチャー
- 声の質・量
- 席のとり方
- 言葉遣い
- 服装・身だしなみ
以上の7点をチェック!
CL4
はい、私大学卒業後に和菓子の製造販売会社に入社しまして、
今は総務部長をさせてもらっています。
もう長いもんで大学3年の時にアルバイトで入ったのでもう30年ですかね。
ずっとお世話になってます。
昨年・・・社長が亡くなりましてこの3月で廃業することになりました。
従業員の再就職先なんかはですね、
私の方で取引先にお願いして何とかなったんですが、
私自身が会社から紹介されている仕事はあるんですが、
まあ務まる自信が無くてですね、
ちょっとどうしたらいいか分からず悩んで相談に来たんですが。
「はげまし、支持」
KA
「そうなんですね」は、マイクロ技法でいう最小限度のはげましです。
CLの応答に対するもっとも単純な応答は、
「ふんふん」「なるほど」「そうですか」などの相づちを伴う
うなずきであることを覚えておきましょう。
最小限度のはげましを「はい」「ええ」「そうですか」と、
きちんと相づちを入れていて良かったと思います。
「社長が亡くなりまして」に、声のトーンを合わせての相づち、
表情をミラーリング、話すスピードも良いペーシングで来ています。
CC4
そうなんですね、マツダさんは大学を卒業して今の和菓子製造会社に
入社されて30年・・・凄いですね、長くお勤めされて、
それで総務部長をやってらっしゃるということで
(そうですね、3~4年くらい前から社長に言われて)
それは社長からの評価が高かったんですね。
「主訴の要約」
KA
ここは冒頭の主訴の部分になります。
論述試験でもそうですが、悩み抜いて相談に来るわけですから、
普通は最初に表面的な大事な言葉を言ってくると思うのです。
そういうわけで、冒頭の主訴は出来る限り正確に、感情の反射も含めて
「繰り返し」技法を推奨していますが、これには3つのメリットがあります。
主訴要約の3つのメリット
- CLにそのまま伝え返すことにより、自分はどうして相談に来たのかという自己理解を促し、聴いてもらえるという安心感を深めてもらうため。
- CCが言葉に出すことにより、CLの主訴を共感的に理解していることを言語と非言語でも伝えてラポール形成、自分自身も覚えておくため。
- 口頭試問で相談者の問題点は?と聞かれる可能性が高いので、少しでも質問にスムーズに答えられるように口に出して覚えて慣れておくため。
この3つのメリットを使っていない伝え返しですと、
「このCCは自分の話をちゃんと聞いてくれているのだろうか」と、
思われるでしょうし、不信感を持たれる可能性もあります。
なんか都合よく聞かれている印象を持たれる方もいるのではないでしょうか。
それと、繰り返し≠オウム返しです。
※キャリコン義塾テキスト第2版9ページCC4の要約文を覚えると楽です。
ここでは更に「社長の評価が高った」とCLのことを承認して褒めています、
こういった細やかな配慮もラポール形成には大切です。
CL5
そうですね、まあ 任せるよってことで・・・頼まれたんですけど。
CC5
そうでしたか、その社長が亡くなられて、
今いるところが廃業となるということで、
他の社員さんは就職先が決まったけれども、
マツダさんの方は紹介を受けているところもあるけれど
ちょっと今務まるかどうか自信が無いというご相談ということで宜しいですか。
CL6
はい、そんなとこですね。
CC6
その辺をもう少し詳しく、
今お感じになっている気持ちなどを聞かせて頂けますか。
「3つの同じ意味」チャンクダウン
KA
「もう少し詳しく」は思考をほぐす良い質問の仕方なのですが、
更に素晴らしいのは「今お感じになっている気持ちなど」という表現を使って、
CLの話す流れを「うながす」ことが出来ています。
同じ意味でも、表現の仕方次第で相手からの印象を良くも悪くも出来ますからね。
質問をかぶせる時は相手に答えて頂くわけですから、出来るだけ丁寧に、
分かりやすく、説明して促す、場合によっては承認して勇気づけて
発言を促すなども、実技試験の舞台や普段の相談ケースにおいても
コミュニケーションを円滑にしてくれるはずです。
例えば、
- 「もう少し詳しくお話頂けますか」
- 「もう少し詳しく今お感じになっている気持ちなどを聞かせて頂けますか。」
- 「とても悩まれて本日はご相談にいらして頂いたのですね、ありがとうございます。マツダさんのそのお気持ちを一つ一つ整理しながら、お話を伺いたいと思いますので、詳細や気になる点をもう少し詳しくお聞かせ願えますか」
実は、1~3は全部同じ意味のことを言ってます。
どの言語表現が相手に受け入れやすい印象になるでしょうか・・・。
3までいくと、ちょっとくどいかもしれませんが、
本気で悩んでいる方や国家検定という視点で考えると、
大げさというより、CLは救われたような気持ちになるのではないでしょうか。
私自身は第一印象で3のように言われたら、発言を促されたら、
この人なら安心して話せそうな気がして、少し心を許してしまうと思います。
こういった表現もテクニックですし、「開かれた質問」を際立たせてくれます。
我々CCが問題把握するためにも真に迫る有効な技法ですね。
CL7
長くやってきまして、30年ですね。
私はアルバイトの時から社長にはお世話になっていて、
就活なんかも当時は就職難というわけでもなく、
会社の社風も良かったし、仕事も面白かったので、
そんなに就活もせずに今の会社に直接入ろうかなと。
そこから色々な仕事をさせてもらって部長になったんですけど・・・
まあね、社長も70過ぎてたんでね・・・
色々苦労もされていて大変だったんでしょうね。去年亡くなってしまって。
CC7
とても残念なことですよね・・・。
「感情への応答」
KA
もう少し感情への応答を丁寧にしてもいいですね。
「社長とは本当に長いお付き合いをされていて、
会社ともご縁があって長い間働いてこられたのですね」とか。
そして、
「社長が亡くなられたことについてはマツダさん、どのようにお感じですか」
と、続けると関連性&一貫性があって話がスムーズかもしれませんね。
社長が亡くなったという転機によって、マツダさんが抱える問題点は何か、
感情の応答と開かれた質問で問題把握していきます。
問題把握するための「問いかけ」も大切です。
CL8
長い付き合いでしたから私としてはショックでしたね。
CC8
そうでしょうね、ずっとね、大学卒業してからそこに入られたということは、
社風も気に入ってとおっしゃってましたけど、
社長さんのこともマツダさんにとっては大きな存在だったのでしょうか。
CL9
そうですね、社長はやっぱり私に目を掛けてくれたというのもありますし、
社長を中心によくまとまった会社というか働いている方の感じも良くて、
自分たちの仕事をやりながら盛り立てていくような会社でしたから。
CC9
う~ん、その中の一員としてマツダさんも頑張ってやってこられたのですね。
4つの「いいかえ」で関心を示す
KA
「いいかえ」にはいくつかバリエーションがあるのですが、
CC9では「一員として」整理し、関心を持って聴いているよと、
発言内容に沿いながら後押しするような技法になっていますね。
私が知っている4つの「いいかえバリエーション」には、
- 関心
- 展開
- 内容の具体化
- 気付きの促し
の4つがあります。
同じ「いいかえ」ですが、細かく使い分けるとこんな感じです。
まずは大枠で「繰り返し」(安心感・問題点の確認作業)を覚えてから、
「いいかえ」でバリエーションを増やすと相談スキルの厚みが増すと思います。
あと、「う~ん」よりも「なるほど」の方がCLを理解して
「いいかえ」ている雰囲気になって良いですかね。
こういうちょっとしたズレが不信感としての痛手となることもあります。
CL10
一筋でみんなのために30年、
会社のために社長のために頑張ろうとやってきましたので。
CC10
そうですか、突然のことで社長さんが亡くなられて、
廃業と聞いたときはどんな風にお感じになられましたか。
「トランジションの前後」
KA
ここはトランジションの前後にかかりそうなところですね、
社長の死と廃業、この相談者が悩むきっかけとなったところと言えます。
ということは、
この転機をどのように乗り越えるかという前向きさを引出すために、
このトランジションをCLがどのように捉えているかという
自己・状況を点検するのが、みなさんご存知、4S点検ですよ! www.careerlife.jp
シュロスバーグ氏も提唱していますが、キャリアの転換とは、
社会的・組織的要因によってもたらされるものですから、
自らこれを上手にキャリアマネジメントする工夫が必要になります。
いわゆる自己資源(リソース)の整理ですね。
そのためにもトランジション前後の自己と状況に気付きを促すということは、
自己変容を支援するような関わり方で大切だと私は思っています。
日本式(論述試験)のキャリアコンサルティングプロセスに当てはめると、
自己理解と職業理解を促すのと同じような考え方でいいと思います。
認知の歪みに気付きを促すとも言えますね。
おわりに
さて、
【第19回キャリコン2級実技面接/仮想ロールプレイケース4】前編
はいかがでしたでしょうか。
今回からケース4の方を随時ご紹介して行きますが、
時間が無くてなかなかまとめられず、掲載が遅くなり申し訳ございません。
楽しみにして頂いているというか、
試験対策の参考にして頂いている方のご要望もあり、
ドンドン掲載したいところなのですが、ここ数日、大変有難いことに
テキスト販売のご依頼が立て続けに来て忙しくしております。
慣れないことなので、プリンターのインクが切れて焦ったり(笑)
特定商取引法や個人情報保護方針をまとめたり、
せっかくなので、サイト内にテキスト販売をグローバルメニューに追加して
リンクさせたり・・・久々にカスタマイズをすると手間取りますね( ;∀;)
テキストも合格への真心を込めて、
丁寧に手作りをしているので時間が掛かってしまいます。
一方で、皆様の期待に応えられるよう、第20回に向けたテキストも、
もっともっと素晴らしい、キャリコン試験対策に役立つ内容にする、
新作へ向けての意欲も出てきましたので頑張っていきたいと思います!
直前期ですが、個別指導もお待ちしております(*´ω`*)
次回は、
【第19回キャリコン2級実技面接/仮想ロールプレイケース4】中編
へ続きます。
本日もお忙しいところ、
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
試験対策講座関連の過去記事はこちらです、
合わせてお読み頂けると大変ありがたいです。