- はじめに
- 相談事例
- 「クライエントファースト」
- 「グッドポイント」
- 繰り返しと要約で整理してから質問する
- 「シンプルな質問」
- 「自己資源(サポート)の点検」
- 「言語スキルで感情への応答を丁寧に行う」
- 関係構築と問題把握「言語スキル」
- 「問題の深掘」
- 「阻害要因の解消から意思決定支援」
- 「承認の仕方と不適切な表現や言葉」
- 「意図的な問いかけの引き出しが少ないと・・・」
- 話がループする原因と対策
- 「問題把握」
- 「疑問はその場で解決!」
- 「時間軸を具体的に深掘りする」
- 「開かれた質問で展開を始めて徐々に閉ざされた質問へ」
- 「相談ができない環境要因にとらわれているCLへの配慮」
- 「具体的展開力の技法」
- 「対決技法」
- 「中長期的な視点の使い方」
- 相談事例
- 総まとめ
はじめに
名もなきキャリアコンサルタントこと敬天愛人です。
現在開講中の第20回キャリアコンサルティング技能検定2級試験対策講座。
この講座の中で、実技面接試験出題の仮想ロールプレイを実施し、逐語録を分析してカウンセリング技法などの確認を行っています。
今回は仮想ロールプレイ中「その瞬間」に修正をして、具体的展開力までのイメージや成功体験をしてもらう指導編となります。
相談者役をやりながらキャリアコンサルタント役の方の修正点を見つけて、その都度アドバイスをしていくので、指導する側としても難しく、逐語録よりも精度は落ちますが、臨場感や緊張感がある為、流れがイマイチ掴めない方や、言語スキルをどのように展開すればよいか分からない方に効果的です。
この指導では目標設定の流れや方策の進め方などの大きな流れを掴み、その場で修正しながら理解・習得出来るメリットがあります。
録音してからすぐに振り返り、チェックもその場で行っていますが、20分を超えても良いので、まずはしっかり具体的展開力までの道筋や、小さな成功体験を積み上げて自信をつけて欲しいと思っています。
カウンセリングを堂々と、頼りがいのある雰囲気で進める要素として、全体の流れを把握し、次にどうするかを体感して習得することは大切です。
恥ずかしながら私も初めは何をどうしていいか分からなかった時期があり、オドオドしながら、おっかなびっくりロープレをした苦い記憶があります(笑)
誰もが最初は初心者です。
初めからプロやベテランのように相談支援をすることは出来ませんし、どんな凄いキャリコンも、偉い先生でも初めはヨチヨチ歩きだったのです。
人間の進化の過程で一段飛ばしなどあり得ません。
一段飛ばしで進んでいるように見える人は、見えないところで何度も階段につまづいて、先に進む努力を一生懸命しています。
そういう背景があるから突如として躍進したりするように見えるだけです。
通る道は皆さん同じなんです。
そう、学問は裏切らないのです。
まずは次のキャリアコンサルティング技能検定2級合格という階段を、一歩一歩、着実に一緒に昇っていきましょう。
では、キャリア理論と実際のリアルなロールプレイをご覧頂き、試験対策やコミュニケーションツールとして役立ててもらえたら幸いです。
ロールプレイを修正したポイントが見れる指導編となっております。
※ロープレ内容につきましては、試験と全く同条件の表示はできませんので、基本情報等は変更しておりますが、キャリアコンサルティングスキルの確認という視点であれば、それほど違和感はないかと思います。
CL役はヨシダさん、
CC役はスズキさん(仮名)
指導・添削は私でお送りします。
試験を受けない方でも相談を受けた時や
コミュニケーションなどに役立つスキルですから参考にして下さい。
では、行ってみましょ~う!!
相談事例
◆ケース5 ヨシダさん 36歳
相談者(以下CLと表記)
キャリアコンサルタント(以下CCと表記)
確認ポイント(以下KAと表記)
CL1
ヨシダです。
CC1
ヨシダさん、こんにちは。
今日はようこそお出で頂きました。
どうでしょう、お席の位置とかは。
CL2
大丈夫です。
CC2
はい、私はキャリアコンサルタントのスズキと申します、今日はよろしくお願いします。
最初に2点だけお話をさせて下さい。
今日ここでお話し頂く内容っていうのは、ヨシダさんの許可なく外部に漏れるようなことはございませんので、どうぞ安心してご自由にお話し下さい。
(はい、ありがとうございます)
それともう一点、今日の時間なんですが、20分ということになっていますのでご了承ください。
それではヨシダさん本日はどのような相談でお見えになられましたか。
CL3
私、大学を卒業後に食品メーカーに勤めてたんですけど、育児休業から復帰した後の仕事と育児の両立が上手くいかなくて、不本意なんですけど4年前に退職して今は専業主婦をしています。
今までは育児や家事に夢中だったんですけど、子供も小学生になりましたんで、ちょっとまた生活に物足りなさみたいなのも感じてまして、以前のようにやりがいのある仕事がしたいんですけど再就職には不安や心配もありまして・・・。
どうしたらいいのかということで相談に伺ったんですけど。
CC3
そうなんですね、ヨシダさんは以前食品メーカーにお勤めでお子さんが出来て育児休職ということでしばらくお休みされて復帰された時に育児とお仕事の両立がうまくいかなかった。
それで不本意ながら退職された、そういうことなんですよね。
今は専業主婦をやっておられるけども、お子様が小学校に通われていて少し物足りなさを感じておられて、以前のやりがいのあるようなお仕事に就きたいということで、再就職への不安とか心配とかがおられるということなんですよね。
その辺りのお気持ち、もう少し詳しくお聞かせ願えますか。
CL4
はい、4年前は仕事と育児というのが両立できなくて退職してしまったんですけども、仕事自体は自分にも向いているというか営業事務みたいな仕事だったんで良かったんですけど。
子供体調不良とか休みがちだったり、仕事もなかなか前のようにうまくいかなくてですね、退職してしまったので、今度就職するならそういうところはなるべく気を付けたいというか失敗しないようにしたいなというのが不安な点なんですけど。
CC4
そうなんですね、以前復職された時にお子さんの体調が良くなかった時とか休んだり、その辺りで休みがちになったんですかね、それで両立が上手くいかなかった、お仕事自体は営業事務でやりがいがあった?
CL5
そうですね、向いていたというか好きな仕事の部類なのかなと思ってますけど。
CC5
で、今その辺りのお仕事とお子さんの体調で休みがちになったところで今度うまくいくかなと、ご心配なんですかね。
「クライエントファースト」
KA
「向いていた・好きな仕事の部類」という、CLの好みというか価値観が出ていますので、
「向いている仕事をもう少し具体的に聞かせてもらえますか」
「好きな仕事の部類、ヨシダさんにとって好きな仕事をもう少し詳しく」
などを問いかけて、前向きな気持ちや価値観、感情の深掘りをしてもいいですね。
CL6
そうですね、再就職してからまた退職というのも嫌なので、出来れば長く勤めたいなと思ってますけど。
CC6
そうなんですね、また休みがちになったりするのも心配されて、今度は長く勤めたいから。
CL7
そうですね、辞めたのは不本意だったんですよね。
前職でうまくいかなかったというか。
CC7
辞めたのは不本意だったということなんですよね。
その不本意だったという部分をもう少しお聞かせ頂けますか。
「グッドポイント」
KA
ここの問いかけは良いと思います。
主訴にも出てきている感情部分ですし、不本意だった気持ちについてどう思っているのか、きちんと聞けてますね。
CL8
う~ん、営業事務の仕事は自分も好きだし、それなりにやっていける自信もありましたし、しっかりやってたと思うんですよ。
その仕事と、育児もしっかりやろうとしたんですけど、そういったところで上手くバランスが取れなかったいうか、両立という面でうまく出来なかった自分自身の不甲斐なさじゃないですけどそういったところが不本意に感じましたかね。
CC8
う~ん、仕事も一生懸命にやって、今から考えると育児の方も一生懸命にやった、両方とも一生懸命やろうという風に・・・凄い頑張り屋さんなんですよね。
繰り返しと要約で整理してから質問する
KA
CLからの長い応答は感情中心に、CLの言葉を繰り返し技法と要約で整理してから、
意図的な問いかけでCLに考えさせる工夫をしましょう。
例えば、
「営業事務は好きで自信もあってしっかりやってきたけども、
両立というかバランスが取れなかったことを不本意に感じてらっしゃる」
と要約してCLの気持ちや考えを整理した後に、
1「では、ヨシダさん、どうすれば両立出来たと思いますか?」
や、
2「ヨシダさんはどうしてバランスが取れなかったと思いますか?」
や、
3「自分自身の不甲斐なさで退職したことを不本意に感じたのですか?」
などの質問で問題の深掘りをしていきます。
- CLはどうすれば仕事と育児の両立が出来たのか
- どうして仕事と育児の両立が出来なかったのか
- CLは何を一番不本意だと感じているのか
こういった意図的な問いかけで考えさせて気付きを促してもOKです。
CC9で深掘りしようとしているのはいいのですが、少し回りくどい応答で質問の内容が分かりづらく、カウンセリングの流れも滞っている印象です。
CL9
まあ頑張ってきたつもりなんですけどね・・・。
CC9
う~ん、そこの辺り、両方とも一生懸命やろうと思われていたということなんですけど、今回はお子さんが小学校に上がられるということもありますけど、その一生懸命ってご自身が不本意だったというところはどういう風に考えてます、今回の再就職。
「シンプルな質問」
KA
自然な流れで行くなら「どうして上手くいかなかったのですか?」という質問だけでもいいくらいです。
あれが出来なかったんだ、これが出来なかったんだという問題点をシンプルに気付かせる「質問」が大切です。
CLは頑張っているのに出来なかった理由があるはずです、もう一回やってみましょうか。
CC9(リトライ)
両方とも頑張ってやろうと思われたんですよね。
では、ヨシダさんはどうして上手くいかなかったと思われますか。
CL10
上手くいかなかった理由か~、それがちょっとよく分からなくて・・・。
子供が体調悪くて仕事行けなかったりとか、育児も思い通りに行かないっていうのが結構あったんですよ。
ですから両方とも一生懸命やり過ぎたのはいけないのかなって思いますし、でもそれだけじゃないような気もするですよね。
「自己資源(サポート)の点検」
KA
「それだけじゃないような気もする」を深掘りしてもいいですし、「育児と両立するための時短勤務や制度など利用されたんですか」で、そういうサポートを得られているかを点検してもいいです。
CC10
頑張り過ぎちゃったんですかね。
CL11
ええ、育児とかなかなか上手くいかないじゃないですか、そうするとなんか職場でも申し訳ないというか居づらくなったりもしましたし、育児休業前と同じような仕事が出来なくなってしまったんで・・・そういうのも嫌でしたよね。
CC11
お子さんも体調悪くなるし、育児休業前と同じように思うようには出来なかったということなんですよね。
CL12
できませんでしたね、はい。
CC12
その時、お子さん小さい間は時短勤務とか、そういうものの活用というのはどうだったんでしょう。
CL13
そういうのがあるのは何となく人事の方から聞いてたんですけど、やっぱり同じように復帰しただけにしっかりやらないといけないのかなとか、同じようにやっていけるのかなって自分でも思ったんで・・・、気付いてはいたものの使わなかったというのはあります。
確かに今思うとそういうの活用した方が楽でしたよね・・・、辞めなくても良かったことになったかもしれないし。
CC13
今思うとそういうのを利用した方が良かったかなと。
「言語スキルで感情への応答を丁寧に行う」
KA
まず、もっと感情への応答を丁寧にやった方がいいです。
「活用していたとしたら楽になったかも」「辞めなくて良かったかも」と、せっかく気付いたことを言ってくれているのですから、相談者自身で気付けたことを承認した後、
「会社制度などを活用することで今後は両立が出来そうですね」とか、
「会社制度などのサポートを活用する必要性に気付いて頂けましたか」等、
相談者が気付いていない問題点として把握したことを具体的に共有しましょう。
関係構築や問題把握というのは、このように不安を解消し、これからの前向きな行動や主体性を引出すと上手くいくはずです。
こういった言語スキルの細かい積み重ねでリレーションを深めましょう。
~10分経過~
CL14
時短とかならなんとかね、仕事内容も変えられそうじゃないですか、そう言う意味では周りの見る目なんかも違ってくるし、また余裕が出来たら戻ればいいと思いますしね。
CC14
じゃあ今後再就職される際はそういった制度も利用してという風にお考えですか。
関係構築と問題把握「言語スキル」
KA
制度を利用出来ていないことに気付かせた点はいいのですが、「再就職」というキーワードはCLからの言葉ではなく、要約やいいかえとも言い難い応答なので、まだ出さなくても良い気がします。
この流れで深掘りしていくこと自体は良い流れだと思うんです。
不本意ながら退職した、転機前後の話の流れで深掘りしていますから、トランジションを乗り越えるために必要なサポート資源の一つとして、制度利用をCLに気付かせてほしいところですね。
再就職の話で展開するのであれば、あくまでCLが主体的に考え転機を乗り越えられるように、
「ヨシダさんが必要性に気付かれた時短や会社制度の活用という視点は、今後の再就職へ向けても生かせそうじゃないですか」
という感じで、あくまでCLが前向きに考えられる言い回しの方が指示的なニュアンスの提案にならない気がしますね。
例えば制度利用の問題把握は出来て気付きも促せたと判断して、次のステップへ移行し、
「ヨシダさんがおっしゃる通り制度が活用できたら以前の職場でも結果は違ったかもしれませんね、ところで制度以外では他にサポートしてくれそうな仕組みや周囲で助けてくれそうな方は思い当たりませんか」
などで、
時短以外の資源に気付かせる質問で幅広く展開するのもありだと思います。
再就職の活動の前に、どうして自己資源が活用できていないのかを気付かせる、自己・状況を丁寧に点検して認知の歪みを解消することにより、自己理解を深めるのが先かなと・・・細かいところですが。
CC14(リトライ)
当時はご主人なんかにはどんなお話をされてたんでしょうか。
CL15
主人は大手の商社に勤務しているので、時間が取れないというか普段は家に居ないんです。
休みも付き合いなんかもありますし、夜も遅いのでうまく相談してなかったとは思います。
子供は好きなので休みなどは面倒を見てくれはします。
まあ、あんまり助けは得られない状況ですかね。
CC15
ご主人は休みの日とかはお子さんと遊んでくれるけども、普段はご主人は商社勤務なので帰りも遅いし、そこの助けは期待できなかったということなんですかね。
その時に上司に対してご相談とかはされたんでしょうか。
「問題の深掘」
KA
上司のサポート確認の前に、旦那さんからあまり助けが得られていない状況をどう思うのかを確認すると、もう一段階、問題を掘り下げられるので、その状況について嫌なのか、手伝って欲しいのか、寂しく感じているのか、そういった感情部分を深掘りしてCLの自己理解を促してから次に行きましょう。
CC15(リトライ)
旦那さんは平日は夜遅いし、手伝って頂くのはちょっと無理だと思われてるんですね。
それについてはヨシダさんはどのようにお感じになられているんですか。
CL16
まあ大手の商社なんでそれはしょうがないと思いますし、たまには子供と遊んでもくれるのでわがまま言えないなって気持ちもありますけど・・・、家は両親なんかも離れたところに居て、なかなか家族の協力が得られないので、そういう相談なんかも出来ると少し気が楽にもなるんですけどね。
迷惑かけたくないような気持ちは持っているかもしれません。
CC16
ご主人は大手商社で勤務で忙しいから、迷惑かけたくないなと思われている。
「阻害要因の解消から意思決定支援」
KA
CLの不安というか不満の感情が出ているところですから、繰り返し技法だけで応答するのではなく、
「では、ご家族の協力が得られるとしたら再就職への不安はどうですか」とか、「旦那さんの協力や相談しやすい状況だとしたらいかがですか」などと問い掛けて、阻害要因を取り除いた自由な意思決定を引出すことでCLは前向きになり、自分で転機を乗り越える戦略を考えられるようになっていきます。
CLの主体性を感じ、前向きになってきたら、
意思決定支援プロセスで「意思決定する段階」の選択肢について、
- 目標を選択したことによる利点
- 選択肢それぞれの行動に取り組んだ場合のメリットデメリットを比較
- 選択した行動の準備、リスクマネジメントを一緒に検討し用意する
こういった問いかけをして考えさせて気付きを促してから、意思決定を導くという支援方法を使うといいでしょう。
CC16では、ご両親や旦那さん以外のサポートに気付きを促しても良いと思います。
例えば同年代の友人やママ友、前の職場の同僚、地域の公共機関や働くママを支援する団体などがないかを考えさせる質問を投げかけてみても展開は広げられそうです。
「同じように悩んでいるご友人はいませんか?」「旦那さんが忙しいママ友さんはどのように協力を得ていると思いますか」「他に相談出来そうな方はいませんか」などで深掘りや点検が可能ですね。
CL17
そうですね、なんとか自分で子育てとか育児とか、仕事の方も両立してやっていかなきゃなという気持ちからかもしれないですね。
CC17
ご自分が両立してしっかりやっていかないといけないなと、ヨシダさん頑張り屋さんなんですね。
「承認の仕方と不適切な表現や言葉」
KA
頑張り屋さん・・・承認(賞賛)しているのですが、少し幼い言い方というか、人によっては下に見られているような印象を与え兼ねない言葉に聞こえませんか?個人的にはカウンセリングで繰り返して使う表現としては少し不適切に思いました。
少なくとも私がCL役だったとしたら、承認や賞賛されてもあまり嬉しく受容できない褒め方、言葉です。
例えば「ヨシダさんは責任感が人一倍強いですね」とか、「一人で最後までやり切ろうとする方なんですね」と承認していくことで、CLには抱え込みやすい性格傾向があり、相談できないことが問題である点を共有(問題把握)していき、その問題を解消するための戦略(目標共有)に繋がる展開なんかも良いですね。
CL18
一人で何とかしようと思っちゃったんですかね。
CC18
振り返ってみて、一人で頑張るっていうご自分に対してどのように思われますか。
CL19
結果的には不本意で退職になってしまったので、旦那にも少し話をした方が良かったのか、時短勤務の話ありましたけど、そういう制度も利用しなきゃいけないのかなとか、そういうのを上手くやると次にも生きますよね。
CC19
なるほど、時短勤務もそうだし旦那さんにももっと相談した方が良かったかなと。
そういう辺り気を付ければいいのかなって思われる。
「意図的な問いかけの引き出しが少ないと・・・」
KA
繰り返しで応答した後に、意図的な問いかけのバリエーションが無いのでCLにそのまま抽象的な質問で返しています。
これだと同じような話がループしてしまうことになり、CLも困ってしまいますし、気付きも促せずカウンセリングの流れも滞ってしまいますね。
例えば、「次の再就職へ生かすためにも、旦那さんへの相談方法や会社制度の活用が出来るように一緒に考えてみようと思いますがヨシダさんはどう思いますか」などと、具体的な流れで一回目の目標共有の同意を引きだしても良いと思います。
この後にCLと目標共有にズレを感じたら、またシステマティックに目標共有の作業へ戻ればいいのです。
CL20
う~ん、なかなかその辺がうまく出来ないのかなと思いますね。
CC20
う~ん、上司に対してはどうなんでしょう。
CL21
戻った時とかですか?育児の前とか?そんな込み入った話はしなかったですね。
せっかく同じような条件で職場に戻してもらって、あんまりそういう人いないんですよ、寿退社が多いのでそういう相談あまり出来なかったですね。
CC21
そうなんですか、そういう同じ条件で戻してもらう方が少ないということで、ヨシダさんどうなんでしょう、上司からの評価もどうなんでしょうかね。
~約20分経過~
CL22
育児休業前はまあまあ良かったと思いますし、ただ、復帰した後はお休みなんかも重なってしまってそんなに評価も得られなかったので、そういう面でも話づらいというのはありました。
CC22
じゃあ育児休業から戻った時に同じ条件で上司の期待に応えたかったということで、そこでもご自分が上手くいかなかったからちょっと話づらかったということがあったんでしょうかね。
話がループする原因と対策
KA
CLが「話づらかった」と言っているのに、「話づらかったということがあったんでしょうかね」と確認をしています。
このように応答がループされている方は結構多いですし、なんでグルグルと同じことを言ってしまうのか分からない方も見受けられますね。
このようなケースは、話の内容を方程式のように分けて、構成的に考えると理解しやすいと思います。
例文/CC22
①じゃあ育児休業から戻った時に同じ条件で上司の期待に応えたかったということで、➁そこでもご自分が上手くいかなかったからちょっと話づらかったということがあったんでしょうかね。
①感情への応答(いいかえのような形で促しをしている)
➁問いかけ(要約のような状況確認?)
①+➁の方程式で構成されている応答内容としては悪くないです、単なる感情への応答ではなく、きちんと意図的に問いかけをしようとしています。
一方で➁は要約のような問いかけになっているため、CLにとっては要約で質問されているような形なので「はいそうです」とか「話づらかったです」くらいしか答えようがないような、閉ざされた質問になっています。
例えばなんですが、
①育児休業から戻った時に同じ条件で上司の期待に応えたかった、
➁そこでご自分が上手くいかなかったから話しづらくなってしまったと感じるのですね。
と、まず「①感情への応答」と「➁端的な要約」で分けて整理します。
CLが上司に話づらかったことを受容し、問題を共有する作業ですね。
そうしましたら、ここにプラスアルファで③~⑤のように意図的な問いかけを展開します。
③気付きを促す
上司以外に話せる方は?同僚にはなぜ相談しなかったのですか?
④阻害要因を解消する
上司に相談出来てたとしたらどうでしたか?
⑤本当はどうしたいか聞く
上司に相談すれば良かったと思いますか?
⑥課題として考えさせる
制度の活用や相談出来ないまま、不本意ながら退職するのは嫌でしたよね?
このような問いかけのバリエーションを用いて、適切な表現や使いやすい言葉を選択しながら、①+➁+③のような方程式で文章を構成し、具体的に展開していくと問題の深堀が出来てきます。
問題の深堀りをするために、こういう構成が必要になるとも言えますが、少なくとも③~⑥を使いこなせれば同じような答えは返ってこないはずです。
やはり相談者には色々な話をして欲しいですし、私は技能士として色々な話を聞いてみたいと思いますよ(*´ω`*)
CL23
そうですね、はい、そう思いますね。
CC23
その時のご自分を振り返ってみてどのように思われますか。
CL24
そうですね~、時短勤務とか上司に相談とか・・・。
家族に相談とかもそうですけど、冷静に客観的に捉えられていると不本意じゃなくてうまく出来たのかなと思いますよね。
CC24
当時振り返って頂くと、時短勤務の利用だとか、あるいはご主人にもう少し相談とか、上司についても相談とか、うまく出来ればサポート出来たのかなと思われる。
CL25
う~ん、言いづらくても言うとか、一人で抱え込んだところがあったのかなと思います。
CC25
なるほど、ヨシダさんは頑張り屋さんだから、一人で頑張らなきゃという思いがお強いんですかね。
CL26
う~ん、そういうのもあるかもしれませんね。
「問題把握」
KA
一人で抱え込んでいたのかもしれないという問題点が一つ分かりましたね。
こういった相談者の性格傾向、パーソナリティの問題はしっかり把握しておき、これによりどういった認知の歪みや思い込みがあるのかを、後半に向けての展開で目標共有し、課題解決のための方策にしたり、口頭試問で指摘するためのCLの問題の一つとして捉えましょう。
この後の展開としては、ここで一つ問題把握をしたので仕事のやりがいや転機の前にしていた仕事内容についても深掘りするようにアドバイスをしています。
また、関係構築を深めるためにも、例えば「旦那さんはその頑張りを見ていると思いますよ」「お子さんは頑張り屋さんのお母さんを誇りに思うんではないですかね」という感じで視点を変えてから、承認や労いをすると心の接触度が親密になるはずです。
CC26
そうなんですね、今の生活で物足りなさを感じているということですが、以前のお仕事にやりがいを感じたということなんですかね。
CL27
育児休暇の前は仕事もまあまあ出来てましたし、評価も受けていてやってましたから内容的には満足してましたかね。フルタイムでしっかりやっていてやりがいもありました。
CC27
う~ん、どう言えばいいですか・・・。教えてもらえますか?
「疑問はその場で解決!」
KA
はい、そうしましたら「営業事務の仕事にやりがいを感じられたんですね」と伝え返しをしてもらってから、「今後の再就職に向けてどういった仕事としていきたいのか、引き続き同じような営業事務のお仕事をしていきたいのか」などで、本人の意思を確認すると問題解決の方向性が見えてきますね。
CL28
ああ、営業事務にやりがいを感じておられたんですね。今回、そういった不安や心配を持ちながら再就職ということですけれども同じように営業事務のようなお仕事をなさりたいと思っているんでしょうかね。
CC28
はい、出来れば同じような仕事が一番安心かなと思いますね。長く正社員とかでやっていければと考えていますけど、子供が小さいですから時間があるとはいえ不安な面もあります。
「時間軸を具体的に深掘りする」
KA
時間的な不安の話が出ましたので、例えば「どのくらいのお時間だったら働けそうですか」とか「実際にどのくらいお時間空いているんですか」と確認して展開するのが良いと思います。そうするとCLが具体的にどれくらいの時間を持て余しているのか分かるので、職業におけるマッチング要素の一つとして把握できます。
CC28(リトライ)
時間のお話がありましたけれども、 どれくらいの時間でしたら毎日働けるとお考えですか?
CL29
はい、そうですね~、子供は7時半位に小学校に行きますので・・・その後は家事がありますから、9時から・・・今、小学校2年生なので2時くらいには帰ってくるので・・・一人だと心配ですから1時位までしか働けないですかね。通勤とかもあるでしょうし。
CC29
ではその午前中位のお仕事で営業事務のようなお仕事をやりたいという感じでしょうか。
CL30
そうですね、時間も勿体ないですしそのくらいの時間で同じような仕事が出来ればいいと思うんですよね。
CC30
なるほど、一方で4年前に不本意ながら退職されたということなんですけれども、今回の再就職に当たって同じようにならないように、どうしたらやっていけそうですか。
~約35分経過~
CL31
はい・・・、やっぱり不本意ながら退職するのは嫌なので、就職する時に人事の情報というか、そういう制度、もう一人子供も生まれるかもしれませんし、あとは上司の関係性とか。あと旦那かな、サポートを得られたとしても時短勤務とはいえ協力や相談が出来ないといけないですよね。
CC31
うんうん、まず、旦那さんにご相談ということですよね。
CL32
今は仕事をしていませんから、一番近いのはそうですよね。
CC32
旦那さんにどういう風にお話できそうですか。いつだったらという風に持っていけばいいですか?(私への質問)
「開かれた質問で展開を始めて徐々に閉ざされた質問へ」
KA
そうしたら「旦那さんに相談出来そうですか」 と開かれた質問で広く問いかけて下さい。
CC32(リトライ)
どうですか、旦那さんに相談出来そうですか。
CL33
でもね~、忙しそうなんですよね。疲れてるってよく言ってますし。
CC33
疲れてらっしゃる・・・、どうでしょういつだったらご相談出来そうですか。
CL34
いつか~、なかなか無いんですよね~。休みの日とかも忙しそうにしてますしね。
CC34
う~ん。
「相談ができない環境要因にとらわれているCLへの配慮」
KA
例えば、
CL33「でもね~、忙しそうなんですよね。疲れてるってよく言ってますし。」
CC33「疲れてらっしゃる・・・、どうでしょういつだったらご相談出来そうですか。」
↓
CC33「いつも忙しそうで疲れているように見えるんですね、旦那さんには長期の休みや疲れていない時はありませんか?」
と、問いかけるとCLが相談しづらい気持ちに寄り添いながら、具体的なアプローチを考えるきっかけを作ることが出来ます。
もともとCLは相談出来ないで悩んでいるわけですから、「いつだったら」と聞いたところでそもそも答えづらいわけです。
ここでは我々CCが積極技法などを用いて問題解決を促す支援が必要になると思いますので、CLが相談出来る状態になれるイメージを持たせてあげないことには、前向きな意思決定やアクションプランに繋がりません。
CC33「旦那さんが機嫌の良い時や、一緒に旦那さんに話すのを助けてくれるような方に心当たりはありませんか」
などでも良いと思います。
CL35
普段は帰ってくるのが遅いので、週1,2回ある休みとかですか。
CC35
では、今度のお休みの日に時間を取ってもらうようにアポ取ってみませんか。
CL36
どうやって声掛けたらいいですかね・・・。
CC36
う~ん、再就職したいというお話はされていて、お子さんの面でご心配があるということで今度、不本意ながら退職はしたくないと。そしてどういった形であればうまく進めて行けるかを一緒に考えていけるかという位置づけで提案してみませんか。
CL37
そうか・・・、もうちょっと簡単に言うと何ですかね。
CC37
なんて言ったらいいですかね。(私へ質問)
「具体的展開力の技法」
KA
そういった場合は、まあ技ですけど「一回伝えたいことをメモしましょうか」とか、「一度紙に書きだしてみましょうか」とまとめてみるのは如何でしょうか。
「まずは不本意だった理由を書いて、どう伝えればいいのか、何が伝えづらいのかというのを一度まとめて頂くのはどうでしょう」とか。
そうすると「そういうのは出来そうです」となれば、どう言えばいいか一緒に考えましょうで一つの方策としてまとめていっても良いと思います。
※緊要度の高い方策を共有する一方で、CLの発達度に合わせて目標範囲等を明確にし、目標とするハードルをCLの自己一致度や行動力に合わせてあげるイメージで具体的に展開します。逆にこういった場面では、あーした方がいいとか、こうした方がいいというアドバイスや情報提供優先で指示的にもなりやすいので注意しましょう。
紙に書きだすことやE.シャインの理論にある役割マップなどは、物事を客観的に捉えることにも役立ちます。
「対決技法」
KA
それでも嫌だとCLが応答した場合は対決技法で、「先ほどヨシダさんは不本意ながら退職した悩みの元が解消されないと、次の再就職でも失敗するかも」と仰ってましたよね、失敗しないためにはどうしたらいいんでしたっけ?」と、あえてこういった問題と直面させるような問いかけも時には必要となります。
どうやったらこの状況をヨシダさんは乗り切れるのか、それを自分自身で考えることができるようになる為の支援・アプローチがCCの役割として期待されます。
※対決技法を用いる時はあくまで支援者としての姿勢・態度で臨みましょう!
CC37(リトライ)
では、伝えたいことってメモに書いてみませんか。
CL38
そうですね、言ってるだけだと伝わらない面もありますし、一回まとめてみた方がいいかもしれないですよね。
CC38
前回、不本意ながら辞めた理由も書いてみては。
CL39
ああ、そうですね。それなら相談出来なかった理由が次に生かせるかもしれませんし、なんかあった時にそれを見れば思い出せるし、視野を狭くしないためにもやっておくといいかもしれませんね。
CC39
うんうん、どうでしょう、それを書いて頂いて一緒に考えてみませんか。
CL40
はい、言い方も含めてまたご相談させて頂いて、自分でまとめて整理したいなと思います。
CC40
どうでしょう、来週のこの時間という風なことで。
CL41
はい、時間の方は特に問題ないので大丈夫です。
CC41
書いて頂いた内容でご相談するやり方、言い方を含めて一緒に考えてみるということで。
CL42
そうですね、わかりました。
CC42
本日はありがとうございました。
「中長期的な視点の使い方」
KA
ここまで来ましたら、プラスアルファで考えて欲しいのは、CLが整理した後の展開もイメージすることです。
紙に書いてまとめることでサポートが得られる→サポートを得られることで再就職への道も開かれる→そうしたら就職に向けて中長期的なキャリアプランを求人情報を一緒に見ながらとか、まずは仕事のブランクもあるのでやってきたことをまとめながら一緒に支えていく、そういった自己・仕事理解を促すアプローチを中長期的な視点で補足した展開を、方策の後半もしくは口頭試問で応答できると、更にCCとしての技量や視野の広さが評価されると思います。
この方が、CLは次回の相談に来やすくなると思いませんか?
これは今後のキャリアプランも考え、引き続き支援していく姿勢です。
ここでやっていることを方程式でまとめ、下のように整理してみました。
目標共有+方策の意義理解+動機づけ+中長期的な視点=CLのアクションプラン
人間は選択肢が増えたり、未来への希望や展望・成果が見えると、動機づけとなって前向きに頑張れる気がします。
総まとめ
【19回キャリコン2級検定/仮想ロールプレイケース5まとめ】ver.2のまとめです。
この後、緊要度の高い直近の方策と中長期的な方策の立て方、最後のまとめ方をアドバイスして講座を終了しました。
結果的には面談終了まで45分経過しているのですが、自分のクセや引き出しの少なさに改めて気付かれたご様子で有意義な内容になったようです。
語彙の少なさはキャリコン義塾Ⅱのテキストで補って頂き、言い換えなどは普段の会話から練習することで習得できますと伝え、事例研究の資料や市販されているカウンセリングの書籍も参考にするとよいと話しました。
カウンセラーは言葉のプロフェッショナルである一方で、しっかりCLと向き合ってカウンセリングする必要がありますので、普段から言葉を大切に使い、適切に選択しながらスキルアップして自然に湧き出てくるように私も頑張りたいと思います。
感情的・認知的・行動的アプローチと色々とありますが、キャリアカウンセリングは「理論から解放されている」という位置づけにあるのではと、木村周先生のキャリアコンサルティング理論と実際にも書いてあります。
そういう意味では包括的・折衷的であるという解釈なわけで、柔軟な思考で適切な理論や技法を用いて、型にとらわれ過ぎず、クライエントのために全力を尽くして支援したいものですね。
※方程式は便利ですが使い方次第です。「今この瞬間」しかない、CLとの関わりや心理的接触を大切にしましょう!
というわけで、キャリアコンサルティング・カウンセリング方法は無限にあり、どれが正しいか正しくないかではありませんが、今回も試験対策やコミュニケーションに必要なノウハウと役立ちそうなアドバイスを簡単にご説明しました。
キャリアコンサルティングを知らない方も、ああ~なるほど、確かにそうかも!と感じた方がいるかもしれません。
マネジメントされている方々もこういったスキルを覚えておくと、部下の相談、人事面談や目標管理等で役立つと思います。
本当にやりたいことが出来れば仕事の成果やモチベーションは上がり、中長期的なキャリアパスが描けますから、段階的な目標も設定しやすいです。
会社員時代の私は、こういう技法を手段の一つとして考え、自分の評価を上げるための要素として充分役立ったと思ってます。
相手の真意を引き出して心を軽やかにすることが出来れば、高度なコミュニケーションが可能となりますからね。
「そんなの難しいよ!」「うちの会社ではそんなの無理!」
これも思い込みや環境要因の一つかもしれません、気を付けましょう。
こういったスキルを習得したい人事・採用担当者や管理者の方からの応募や研修依頼もお待ちしています。
まあ、1年近く広報していますが、居ないんですよね~(笑)
単純に聞き上手になりたい方にも役立ちますよ(`・ω・´)ゞ
一方でキャリコンの育成・取得を考えている人材派遣会社さんでしたら、すぐにでもお役に立てると思います。
先日、受講して頂いた中に人材派遣業界の偉い方がいて、テキストの中身もしっかりしているとお墨付きもらえましたし(笑)私も人材派遣業界の経験者ですから。
やはり、改めて文章に起こして逐語録としてまとめると面白いですし、私自身が色々と気付かされることも多くて勉強になります。事例研究って大事ですね。
いつか、こういう知識やスキルを世の中に役立てるチャンスが欲しいものです。
まずはそういった未来に向けて頑張ります!!
本日もお忙しいところ、お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
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