はじめに
名もなきキャリアコンサルタントこと敬天愛人です。
今回は前回の記事、
ラポールとは?構築する意味と形成テクニック/
キャリアコンサルティングブログ
の中編です。ご覧ください。
CL5
紹介されている仕事というのがスーパーなんですよ。
スーパーの管理職というか後々は総務部長というような感じで・・・
有難い話なんですけど、受けてまして、
ただ私は他の職業経験というのがないので、規模なんかも違いますし、
実際に再就職してそういう仕事が出来るのか
不安に感じているんですよね。(う~ん)
CC5
マツダさんは他の会社の経験が無いということで、
スーパーの方では管理職ということですが、
どういうお仕事と聞かれているんでしょうか。
CL6
はい、マネージメント全般ですね、役職に関しては主任とか課長ですとか
各店舗にいて、エリアマネージャーも居るのかな、
そういったところの統括の部分ですとか、経営に近いところなので、
今までやってきた経験というか、経営的な知識というところも
手伝って欲しいと社長には言われていますね。
CC6
社長の方と具体的に経営的な知識をマネージメントに生かしてほしい、
そのお話を聞いてマツダさんどのように思われましたか。
グッドポイント
KA
社長からの期待を含めた環境要因について、「要約」しながら、
CLがどう思っているのかを確認するオープンな問いかけで良いですね。
CL7
そうですね、お付き合いのある会社だったので、そういう頼りにされる、
そう言って頂けるのは有り難いと思いましたけど。
CC7
今、マツダさんとしては今までその部分を一筋に
やってこられたということなんですが、
そのことについて社長さんからお話を聞いたときに
どういうお話をされたんでしょうか。
「シンプルな応答」
KA
例えば、
「頼りにされる、そう言って頂けるのは有り難いと思ってらっしゃる、
そういった期待についてはどうお感じ(考え)になりますか」などと、
感情への応答を丁寧にしながら「頼り」「有難い」を言い換えて質問すると、
CLは期待されていることについて自分はどう考えているのか、
不安な気持ちもあるが本当は自分はどうしたいのかという、
CLの気付いていない真の問題に迫る深掘りが出来てきます。
このような技法を使いながら関係構築し、問題を共有する作業が、
後の目標共有(設定)へと繋がっていきますので、
評価区分でいう問題把握の評価にもなるわけですね。
相手の言葉を言い換えて聞くだけですから、話の流れの一貫性も保てますし、
関連のある質問で自然に展開していくことが出来ます。
こういった質問技法は、CC視点の価値観や思い込みも表出せず、
最大限、CLの意思決定を尊重した応答と言えると思います。
そして、CC7の
「今、マツダさんとしては今までその部分を一筋にやってこられたということなんですが、そのことについて社長さんからお話を聞いたときにどういうお話をされたんでしょうか。」部分を細かく指導すると、
「その部分を一筋にやってこられた」という応答部分の気持ちは分かりますが
そのようにCLは言っていませんからCCの思い込み(少し先読み)ですし、
「社長からお話を聞いたとき~」の件では、
どういうお話をされたという状況ではなく、「どうお感じになられましたか」
などと返すと流れも良かったのではないかと思います。
感情への応答と開かれた質問で問題把握していきます、
問題把握するための「問いかけ」も大切ですね。
CL8
やっぱり長い期間というか、長い間働いてましたんで、
そういう意味では信頼がおけるというか君は信頼できるよと言ってくれていて。
亡くなった社長とも親交のある方だったんで、
私の話を聞いていて真面目に勤務をして長くやって
総務部長もしているという紹介はしてくれてたみたいなんで、
そういう話はしましたけどね。
CC8
そうなんですね、以前 の社長とも親交があられたと。(はい)
そういうお話があったことに関してマツダさんはどのようにお感じですか。
CL9
あ~、社長がそういう話をしてくれたっていうのは、
評価してくれているというか・・・
外でもそういう風に言ってくれているんだなとありがたい嬉しい気持ちです。
CC9
う~ん、まあそういう風な嬉しい思いを感じられて、
それに対してはどういう風にやっていこうとか思われることはありますか。
「6分経過」
KA
ここまでで序盤の6分程度が経過していますが、労いや承認が少ないですね。
せっかく周りからの評価があるわけですから、前社長からの評価を承認し、
そんなCLの仕事ぶりを労い・尊重しながら、
同僚や部下からはどうだったのか、信頼されていたのか、
家族からも頼りにされてきたんじゃないか、などの意図的な「問いかけ」で、
気付きを促すと共に、自己効力感を高める作業をしたいですね。
今まで信頼を得ることが出来てきたんだと、気付かせてあげましょう。
CL10
そうですね、う~ん。社長が期待してくれたというんですか、
そういう風に外でも言ってくれてたんで、頑張らなきゃいけないのかなって。
スーパーの社長もそういう期待を抱いているだろうし、
私の年だと正直再就職も難しいのだろうと思ったりもしますし、
期待に応えたいとは思うんですけど、
何分やったことがないんで勤めるのは心配ですよね。
CC10
以前の社長さんと凄く長い中で、
期待に応えたいという気持ちはお持ちということで。
「一般的にはどうなのか考えさせる」
KA
53歳で会社が廃業して再就職が管理職候補は一般的には良い話です。
ここでは、マツダさんに管理職候補のお話が、どうして素晴らしいのか、
一般論で概念化してあげてから、お伝えしたい場面です。
例えば、
「再就職の条件面などの詳細は存じ上げませんが、一般的に考えても中高年の再就職は厳しいのが現実です。そんな中、管理職候補として紹介されているということは、マツダさんが高い評価を受けている、今の会社で認められていることの証だと思いますね」
という言語表現にすると、
- 再就職条件の詳細を調べる必要性
- 中高年の再就職について一般論として概念化
- マツダさんを客観的評価をもとに承認する
この3つが同時にできますので、たくさんの気付きを促し、
励ますことも出来ますから、覚えておくと便利です。
これでしたら、CCとしての価値観を全く出さずに、言語的説得として、
マツダさんを勇気づけるきっかけとして展開出来るので良いと思います。
CL11
そうですね、今までもなんとか総務部長をやってきましたし、
せっかく言ってくれているわけですしね。
CC11
マツダさんスキル部分ということですけれども、長い年月、
総務部長まで経験されているということで
色々新しいことに今まで直面された時に、今までどういう風に身に付けられ
乗り越えられてきたんでしょうか。
CL12
そうですね、長くやってきた中で色々な業務をやらせてもらえまして、
最初は製造ですとか、アルバイトからやってきまして、
製造として機械について検査や梱包、出荷をやったりですとか、
10年20年やってくると係長とか、
みんな頑張ってもらうサポートなどやってきましたね。
課長なんかは製造と販売の部門なんかもやりますから
色々やらせてもらって、そういう意味では幅広いことをやってきましたね。
CC12
良い経験をされて、頑張ってこられましたね。
その新しい事のスキル面ということでご心配の内容なんですけど、
今仰って頂いた中でやっぱり新しい事があった時に
どういう風に乗り越えられてきたんでしょうか。
「トランジション」
KA
承認や労いをしながら、今までの経験や転機の前、
どちらかというと上手くいっていた頃の話を引出すことが出来ています。
シュロスバーグ氏のキャリア・トランジション理論では、
「人は人生における様々な転機や課題を乗り越えることによって
成長するという人生観」と仰っていますので、
どうやって乗り越えてきたのかを点検する事は大切です。
一方で、
「転機で重要なのは、転機をどのように受け取り、
どのように対処していくかである」とも言っており、
これこそ、CLが転機をどのように認知しているのか、
自己・状況・支援・戦略を点検するのが4S点検になりますね。
キャリアの転換とは、社会的・組織的要因によってもたらされるものですから、
自らこれを上手にキャリアマネジメント出来るように支援する視点が重要です。
例えば、
CC11で「今までどういう風に身に付けられ、
乗り越えられてきたんでしょうか。」と聞いた答えがCC12なのですから、
「マツダさんはアルバイトの頃からほとんどの業務、様々な職務
と幅広い業務をこなされて、マネージメントでは従業員のサポートなど、
真面目に頑張ってこられて、乗り越えられて来たんですね。
素晴らしい経験だと思います。
その経験の中で、再就職に生かせそうな点などありませんか」
という感じで前向きな気付きを促すと、自己理解と職業理解を深めて、
CC11とCC12の展開にも違いが出てくると思います。
CL13
周りのサポートとかでしょうかね。アドバイスをもらったりですとか、
今までやってきた経験の中で生かせるものを生かしたりですとか・・・
社長なんかもやっぱりアドバイスくれましたけどね、
そういう風に援助を受けながらというか
情報集めながらやってきたのかなと思いますね。
CC13
そうなんですね、周りの方からのアドバイスがあるかなと。
「10分経過/問題把握(見立て)」
KA
ここで半分の10分が経過しました。
ただ傾聴するのではなく、そろそろ、相談者が気付いていない問題点を
CC視点で見立てていかないといけませんね。
そもそも、そのために「開かれた質問」やら「閉ざされた質問」を
意図的に投げかけていることを忘れないで下さい。
ここまでの流れで、CLがどの程度、自己理解・職業理解をしているか、
または、自己・状況をどのように捉え、支援について確認・行動しているか、
そういった客観的な視点で相談者の問題点を見立てて把握しましょう。
例えば、CLは相談やサポート受けられる性格傾向が出ていますが、
支援や情報収集の必要性に気付いていないとCC視点で問題定義すると、
今の状況を前向きに捉えられない認知の歪み(自己効力感の喪失)や、
情報収集不足が問題と見立てられますし、
社長が亡くなっての廃業とはいえ、計画性というか、
中長期的なキャリアプランニング不足も感じます。
一度まとまった要約をして整理してもいいですし、まだ出てきていない、
第3の悩みが無いかどうか確認することも頭に入れておきましょう。
おわりに
次回は、
システマティックアプローチと環境要因への配慮/キャリアコンサルティング
へ続きます。
本日もお忙しいところ、
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
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合わせてお読み頂けると大変ありがたいです。