はじめに
名もなきキャリアコンサルタントこと敬天愛人です。
現在開講中の第20回キャリアコンサルティング技能検定2級試験対策講座。
この講座の中で、実技面接試験出題の仮想ロールプレイを実施し、
逐語録を分析してカウンセリング技法などの確認を行っています。
キャリコン2級を受験される方は、
こういったロールプレイを徹底的に練習されると思います。
でも、皆さんは自分のロールプレイを録音して聞いたり、
試験対策講座の先生に指導を受けたりはしていても、
文章に起こして添削されたことはあまりないのではありませんか?
案外、同じことを何回も言っていたり、
マイクロ技法などの細かいカウンセリングスキルのチェックや
システマティックアプローチのカウンセリングプロセスを
きちんと踏んでいるかなどは、その場の相談支援や指導の会話だけで
確認しきれていないのではないかと思っています。
そんな皆様に、今回は現実の逐語録をもとに、
実際のリアルなロールプレイをご覧頂いて、
試験やコミュニケーションに役立ててもらえたら幸いです。
※ロープレ内容につきましては、試験と全く同条件の表示はできませんので、
基本情報等は変更しておりますが、キャリアコンサルティングスキルの
確認という視点であれば、それほど違和感はないかと思います。
CL役はサトウさん、
CC役はスズキさん(仮名)
指導・添削は私でお送りします。
試験を受けない方でも相談を受けた時や
コミュニケーションなどに役立つスキルですから参考にして下さい。
では、行ってみましょ~う!!
相談事例
◆ケース1 サトウさん 大学3年生
相談者(以下CLと表記)
キャリアコンサルタント(以下CCと表記)
確認ポイント(以下KAと表記)
CL1
サトウです。
CC1
本日担当しますキャリアコンサルタントのスズキと申します。
よろしくお願いいたします。
CL2
よろしくお願いします。
CC2
本日の面接時間は20分となっております。
短い時間ではありますけどもサトウさんとご一緒に
考えて行きたいと思います、よろしくお願いします。
こちらでお話しした内容については外部に漏れることは
ありませんので安心してお話しください。
ラポール形成(心の架け橋)は「冒頭」から
KA
このCC役の方はあいづちのバリエーションも多く、「そうですか」など、
マイクロ技法でいう最小限度のはげましが上手でした。
CLの応答に対するもっとも単純な応答は、「ふんふん」「なるほど」等、
相づちを伴う、うなずきであることを覚えておきましょう。
コーヒーカップモデルのリレーションも同様に大切です。
【リレーション(関係構築)の基本「言語的スキル」】
- 受容
- 繰り返し
- 明確化(感情・意味の意識化)
- 支持
- 質問(閉ざされた質問・開かれた質問)
以上の5点をチェック!
CL3
はい、ありがとうございます。
CC3
それでは本日、サトウさん、どういったご相談ですか。
「非言語的スキル」座る前に確認すること
KA
言葉遣いも全般的に丁寧で、
非言語的スキルも問題なく良かったと思います。
【非言語的スキル】
- 視線
- 表情
- ジェスチャー
- 声の質・量
- 席のとり方
- 言葉遣い
- 服装・身だしなみ
以上の7点をチェック!
CL4
はい、大学2年の時に1年間留学した経験があって、
卒業後に海外に留学したいと思っていたんですね。
母に相談したのですが反対されてしまって、親に反対されるくらいなら
日本で就職しようかなと、で、国内のインターンシップに参加したんですけども
職場の雰囲気とか仕事が合わないと感じるんですね。
海外で働きたい気持ちってのがやっぱりその中で再燃して、
燃え上がってしまって就職活動をどう進めたらいいのかなって悩んで、
今日は伺ったんですけれども。
CC4
海外で働きたいと思われてるけども、
どうしたらいいのかなというご相談なんですね。
「主訴の要約」
KA
ここは冒頭の主訴の部分になります。
論述試験でもそうですが、悩み抜いて相談に来るわけですから、
普通は最初に表面的な大事な言葉を言ってくると思うのです。
その発言を「海外で働きたいと思われてるけども」とまとめてしまうのは、
まとめすぎかもしれません、せめて、「母親に反対されてしまって
インターンシップに参加したものの合わないと感じた、一方で、
海外で働きたい気持ちが再燃しているということですね」くらいの
まとめ方が良いのではと思います。
悩み抜いて相談に言って一言で返される・・・、
確かに的確であればいいのかもしれませんが、この人は聴いてくれている、
分かってくれていると感じるのはどちらでしょうか。
そういうわけで、冒頭の主訴は出来る限り正確に、感情の反射も含めて
「繰り返し」技法を推奨していますが、更に3つのメリットがあります。
主訴要約の3つのメリット
- CLにそのまま伝え返すことにより、自分はどうして相談に来たのかという自己理解と、聴いてもらえるという安心感を深めてもらうため。
- CCが言葉に出すことにより、CLの主訴を共感的に理解していることを言語と非言語でも伝えてラポール形成、自分自身も覚えておくため。
- 口頭試問で相談者の問題点は?と聞かれる可能性が高いので、少しでも質問にスムーズに答えられるように口に出して覚えて慣れておくため。
この3つのメリットを使っていない上記CC4の伝え返しですと、
「このCCは自分の話をちゃんと聞いてくれているのだろうか」と、
思われるでしょうし、不信感を持たれる可能性もあります。
なんか都合よく聞かれている印象を持たれる方もいるのではないでしょうか。
それと、繰り返し≠オウム返しです。
CL5
はい。
CC5
それではもう少し詳しくお聞かせ願えますか。
チャンクダウン
KA
「もう少し詳しく」で思考をほぐす良い質問の仕方です。
CLは悩み抜いてリソースを整理出来ていませんから、
初めは悩みという大きな塊をほぐすような質問、
「開かれた質問」がCLにとっても大切ですし、
我々CCが問題把握するためにも有効な技法です。
CL6
留学先はアメリカで凄く開放的な雰囲気で、学生同士の交流も活発でして、
私としてはいろんな国から学生さんが来ている点で文化交流も楽しくて、
ある程度働き方とかみんなに聞くと凄く楽しそうなイメージがあります。
ちょっと憧れを抱いていますので、やっぱり海外で働きたいという気持ちです。
CC6
なるほど、それで2年の時に1年間行ってこられたわけなんですね。
「感情の反映」
KA
「文化交流も楽しくて」
「働き方とかみんなに聞くと凄く楽しそうなイメージ」
この辺りのCLの言語表現はポジティブな感情が強く出ているところです。
端的でいいので丁寧に、相手に伝わるような感情の反映をしてあげると、
CCの表情や言語を聞いたCLの自己理解が深まりますし、
共感的理解やかかわり技法(関係構築力)の評価が高くなると思います。
逆にこれが出来ないと感情への応答が出来ないので、問題評価、
問題把握に繋がる深堀が出来なくなってしまう可能性があります。
「私は海外が好きで働きたい」こういったCLの理想を後押ししてあげて、
主体的な意思決定を引出す手法に慣れておくと目標合意に繋がります。
CL7
はい。
CC7
ところがお母様に反対されたと、どんな風に反対されたんですか。
「感情への応答」
KA
どんな風に反対されたのかよりも、
「反対されたことをどう思うか」、
感情を深掘りする質問の方が「問題の本質」に近づけるのではと思います。
CL8
母は公務員なので、 出来れば国内の企業で、
大手さんとか安定した企業の方がいいじゃないのかと言われまして。
どっちかというと固い考え方の人なので・・・楽しい気持ちも
伝えたんですけれども、親も寂しいのかな。
CC8
楽しい気持ちを伝えたけども親御さんの気持ちも寂しいと分かる。
それでインターンシップとかお受けになったわけですね。
CL9
まあしょうがないかなと思ってインターンシップに3社ほど参加しまして。
やってみたんですけど・・・。
CC9
そうですか。やっぱりアメリカに留学されて1年間ということは、
語学力というのもかなり磨かれたわけですか。
CL10
そうですね、それなりだとは思うんですけど。普通に会話できますし。
勉強は一生懸命やりましたので。
CC10
ちなみにTOEICはおいくつなんですか。
CL11
800点くらいですかね。
CC11
だったら日常会話とかは全然、不便なくできるわけですね。
CL12
ある程度はヒアリングをかも出来ますし。
CC12
2年からそんな風に自分の夢を持たれて素晴らしいですね。
CL13
海外でグローバルに活躍したいというか。
こういう世の中なので海外に出て色々な経験をしたいという思いが強いので。
CC13
そうなんですね、じゃあ今のお悩みっていうのは、
3社ほどインターンシップでやってきたとしても
自分自身で国内でもやってきたりして、
お母さんの言い分を聞いていいところがないのかなと探されたのに、
一方でなんかちょっと違うんじゃないかなという矛盾が出てきて
サトウさんとしては悩まれているということなんですか。
CL14
そうですね、インターンシップに参加したんですけれども、
日本の企業ですと参加した方たちも個性が無いというか、
研修なんかもみんな同じことをやりますし、日本人同士ですから
刺激的じゃないですし、そういったところで物足りなさというか
面白味をあまり感じなかったんですよね。
仕事なんかは何したというわけでもないんですが、
研修なんかもカチッとした感じで
面白みや刺激があまりないのでそれでいいのかなと。
CC14
今、3社ほどって言われてましたけども例えば刺激があるとか、
個性の多い留学生なんかが受けるような外資系のインターンシップとかは
お受けになったりとかしなかったのですか。
「要約」と「伝え返し」でCLの思いを傾聴する
KA
例えば「刺激的じゃないし、物足りなさというか面白味を
あまり感じなかったのですね」のように、
そのままCLに要約して繰り返すことが「聴く」姿勢で、
CLをその姿勢に導き励ますことになります。
導くことでカウンセリングの筋道と一貫性を保つのです。
また、面白味がない、物足りなさを感じたことについて
CLはどう思っているのか聞きましょう。
アメリカと比較してなのか、性格や興味適正なのかを探索します。
言葉の選び方や声トーン、表情を伺いながら、
本当はどうしたいのか、国内で働きたくないのか、
どうしても海外へ行きたいのか?を見立ていきます。
ここまで、ちょっと状況を聞きすぎて、CLは本当はどうしたいのかという
感情部分に迫る展開が出来ていないように感じます。
CLはどうしたらよいか分からないから、相談に来ています。
CL15
外資系のインターンシップというのは受けてないですね。
大手さんとか勧められたところ受けていたので・・・、
インターンシップに参加するモチベーションもあまり無かったですし。
CC15
そうなんですね。まあ色々とね個性が強いとか自分たちの意見を戦わしながら、
よりね、良い会社・工場に勤めてというところもいっぱいあると思うんですね。
そういうようなところで、例えばなんですけれどもね、
今はサトウさんは海外か国内かっていうところで思ってらっしゃいますけども、
もしも海外に支社がいっぱいあるようなところで、
国内の会社かもしれないけどいずれは海外の支社でバリバリ行けるような、
そういうような働き方っていう3つ目の選択っていうのも可能じゃないかなと
思うんですけどいかがですか。
CL16
そうですね・・・、そういうところで、
そういうのも考えた方がいいんですかね。
CC16
ではね、ここまでお話をお伺いして、
今サトウさんは英語というアメリカというところもありましたけども、
アメリカっていうのは個性とか自分の意見がしっかり言える。
そういうような社会においてバリバリと仕事をしていきたい、一方でね、
お母さんたちの言うことを聞いて国内での何かそれがないかと調べたけども
ちょっとなさそうだと思っているというところが悩んでらっしゃる
ところだと思うんですけどいかがですか。
「先読み/深読み/思い込み」
KA
CC16「アメリカっていうのは個性とか自分の意見がしっかり言える。
そういうような社会においてバリバリと仕事をしていきたい」とありますが、
CLはそういうような社会だから働きたいと考えているのでしょうか。
例えばCL6「開放的な雰囲気で、学生同士の交流も活発でして、
私としてはいろんな国から学生さんが来ている点で文化交流も楽しくて、
ある程度働き方とかみんなに聞くと凄く楽しそうなイメージ」と、
感じている部分を深掘りすることによって出てきた感情を背景に
ここは見立てた方が自然で、問題の核心に迫れる気がします。
彼女にとって海外で働くのは憧れなのですから。
「アメリカはそういうような社会」という表現に、
少しCCの価値観が見え隠れするような印象をCL役として受けました。
「そういうような働き方っていう
3つ目の選択っていうのも可能じゃないかなと思う」という表現も??
CLは3つ目の選択肢がほしいと言ったのでしょうか・・・。
自分はCCとして価値判断することなく中立であるかどうか、
「無条件の肯定的関心(配慮)」を意識して自分を客観的に評価しましょう。
CL17
う~ん、国内だとそういう働き方はちょっと出来ないのかなって思ってますね。
1年留学した時にあっちで働くこととの違い、ギャップというか感じてはいるので。
CC17
そうしましたらその矛盾とかね、そういうところもあるかもしれないんですけども、
果たして国内ではね、今私が申し上げたようなこと、第3のという感じでね
支社とかあるところがあるかもしれませんのでね
そういうようなところっていうのを学生の支援センターというところで
探されているかもしれないんですけれども、
わたくしの方でもご一緒にその辺を一緒に考えていって、
一つずつ自分の納得された道っていうのをね、
選んで行かれたらどうかなと思うんですけれどもいかがでしょうか。
「言語的スキルのクセとCC視点の見立て?」
KA
この辺りで半分の10分経過しつつあるのですが、
CLが一番不安に感じているところ、もしくは、CLはこうしたいんだという
理想的な展開(主体的な意思決定)を把握・評価しているのでしょうか。
それと言語的表現のクセだと思いますが、「というところ」「そういうところ」
「~ところ」が多くなる傾向があります。
「そういう」という表現はCCが都合よく解釈して濁している表現とも取れます。
「そういうところ」とは何なのかを「明確化」してあげたいですね。
「個性を尊重した自分の意見がしっかり言える社会で働きたいのですね」とか。
違うなら違うとCLは言うので、「ではどういう働き方が出来るのが理想ですか」
などと切り返して、深掘りして行けば良いのです。
それと、これは見立て(問題評価)なのか、意思決定支援なのか、
目標設立なのか、方策なのか、私は聞いていて良く分かりませんでした。
CL18
そうですね~・・・、自分の納得したっていうところですかね・・・。
CC18
他に何かそれ以外でご心配なこととか、これはちょっと引っかかっているなと
思うようなところはありますか。
「思考の拡大を図る質問」
KA
まとまった要約の後に、第3の選択肢を探索する「他には?」は、
思考の拡大を図るための良い問いかけです。
時間的、流れ的にもタイミングが良いと思います。
CL19
将来的に海外で働きたいっていうことに関しては、
それでやっていけるんでしょうかね・・・選び方というか。
CC19
そういうところをね、例えば身近な先輩ですとか、
海外に出られた人のモデルがあるかもしれませんので、
そういうのをお聞きになるという必要は出てくると思うんですね。
それと例えばなんですけれども海外で働くということにですね、
色々な意見を交わしながら個性豊かにというのが、
今そういう働き方したいんだという気持ちというのを
しっかり言って頂いたので受け止めたんですけれども、
やはり海外で自分を主張して行くっていうのは
非常に大事になってくると思うんですね。
そうなるとお母様に対しても自分の思いというのを
ちゃんと言えるような言い方、例えばタイミングですとか、
やっぱりそういうことをしっかり学んでいかなければ海外でも
ちょっと厳しいかなと思うんですよ。
そういうところでね、
例えば伝え方のアサーションシステムっていうんですけれども
そういう風な練習っていうのも出来ますので、
どういう風に伝えていったらいいか、
自分の思いがしっかりと話せるのかというのも、
そういう練習もご一緒にしていきたいと思うんですけどいかがでしょうか。
「情報提供優先/指示的・教示的?」
KA
ここでは私のCL役としての正直な感情を言うと、
何をしてほしくてこんな長い話をしてくれているのか、
それに、とても覚えられませんので困りました。
3つくらい方策が入っているので答えようがないですし、
「今そういう働き方したいんだという気持ちというのを
しっかり言って頂いたので受け止めたんですけれども」
どの場面でそう感じたのかも私には良く分かっていません。
このようにCCから提案されて、CLが主体的に考えることができるのか、
「はい、やります」と言って頂けるのか、
まずはそこから考えた方がいいかもしれません。
例えば、「身近な先輩に海外での働き方を知っている方はいますか」と、
問い掛けるだけでもCLは自ら考えることが出来ると思います。
こんな簡単な提案でもアクションプランが起こせるわけです。
ロールプレイは20分しかないのですから、
基本的に提案・方策も気付きを促せれば充分です。
CCの頑張りすぎ、知識の披露はCLを逆に迷わせてしまうなど、
ためにならないこともありますので注意しましょう。
「CLにあれをしなきゃいけない」「CLはこれをした方がいい」→✖
「CLはどうしたいのか」「どんな支援でアクションを起こせるか」→〇
CL20
アサーションすることによって伝えやすくなるわけですか。
CC20
そうですね、例えばお母様に対してですね、
自分の思いを言われたってことですけれども、お母様が実際に
他に安全とかそういう面以外で何か心配されていることっていうのが
あるのかどうかしっかり聞いてあげるっていうことも
必要になってくるかなと思いますし、それだけではないというのがお話、
伝え方によってね分かってくることもあるんですね。
そういうのって、やっぱり海外でお仕事する上でも
サトウさんの武器になってくると思うんですけれどもね。
「情報提供優先の傾向」
KA
説得的な応答、CCの思い込みで提案優先の思考になっていないでしょうか。
~いかがでしょうか。いかがですか。という表現が続いている気がします。
意思決定支援「メリットデメリットを比較」
KA
例えば15分経過した辺りで、
「国内(海外)で働くメリットデメリットは?」を入れます。
客観的に問題を評価させて、意思を引き出したり、CLの気持ちを収斂させないと、
目標設立のコミットメントがなかなか出来ません。
表面上できたように思えても、システマティックアプローチのステップを
踏んでいなければ結果的に出来ていないと評価されてしまう恐れもあります。
CLが適当に話を合わせている可能性もありますので・・・。
ここが、試験場で「たくさん話をしてもらえてスッキリした」と、
CLに言われたとしても、実際は不合格になる要因だと私は考えています。
逆に、CLが終始不機嫌だったのに合格したと思っている方は、
幸か不幸かカウンセリングステップを踏めていたので、
技法が評価されて合格ラインに達したと思われます。
というわけで、要約、整理しながら弊社テキスト参考に、
マジックワードも駆使した展開をしてみたらどうでしょうか。
海外か、国内か、どちらかに向けての主体的な意思決定、
理想の展開に近づけるきっかけを与えるためにも、
方策でもう一度コミットメントするためにもです。
CL21
例えば留学していて、友人もいますし、ボーイフレンドもいるんですよね。
そういったことは母には言ってないんですけれども、
そういう相談とかもした方がいいんですかね。
CC21
うーん、そうですね、お友達も頼る人もいない中で
向こうに行くのかなというのもあるかもしれませんしね。
CL22
そういうことを言うと母にはそれがあるから海外で働きたいのではと
言われてしまうので言ってなかったんですけれども。
CC22
それも含めてこういうところでこういう仕事をしたいんだという、
例えば何年後にはこういう風になっていたいんだというような
中・長期的なビジョンですとか、そういうことをお話していくと
最初は抵抗に合うかもしれませんけど、
自分自身が考え方をまとめることによってサトウさん自身が
やりたい方向を明確化するんですね。
CL23
はい・・・。
CC23
ではね、ちょっと今後のことを考えまして、
例えばまず海外の方の外資系の方の会社でここはいいなと思うようなところ、
それと国内の中でも海外に支社があるようなところも含めて
求人票とかでいくつかピックアップしていって
それで私とともにメリットとかデメリットというものを
一つ一つ考えていきながらそれを参考にしてお母様の方にももっていく、
そういう形で今後進めていく、考えて行くというのはいかがですかね。
問題把握をするために必要なこと
KA
見立てや質問で問題把握するための深堀りが出来ていないので、
目標設立のコミットメントが中途半端になってしまい、
同じような情報提供、提案がループしている気がしませんか?
CLによっては置き去りにされた印象、イライラし始めるかもしれません。
いくつか同時に提案していますが、まず今回の面談でクライエントのために
設定するべき目標、コミットメントを改めて確認しましょう。
目標設定からの方策
KA
キャリア目標とは、今後の達成に向けたプロセスが予測可能であり、
その進捗状況、達成状況を客観的に理解、評価できるものであればベターです。
例えば「上司へ相談する」が目標なら、どのように話すか、CLは実行出来そうか、
そして、どんな結果が得られたのかが客観的に分かるものが良いということです。
ビジネス用語でデッドラインという言葉がありますが、
例えば、「いつまでに相談できそうですか」「2週間後に結果を教えて下さい」
などの時間枠を明確に設けることで、より実行プロセスが明確になります。
シュロスバーグ氏の4S 点検で言うところの物理的支援(時間軸)を
点検することで明確になるのと一緒だと思っています。
新たなる一歩、挑戦への熱意をそぐことがないよう、
無理のない達成可能な目標設定を援助することが「意思決定」支援です。
2級は技能士はこういった技法を理解して安定的に使えること、
自分が出来ているかどうか客観的に評価できるレベルが到達基準となります。
CL24
うーん、そうですね、海外で働きたい気持ち、再燃した気持ちを
どうやって決着をつけたらいいんですかね。
CC24
うーん、再燃した気持ち・・・、
例えばもうちょっと具体的に教えてもらえますか。
「終盤に自己理解不足/自己一致ならず」
KA
CL役をやっていて自分の今の気持ちが整理出来ず、
どうしたいのか分からず終わってしまいそうなので発言しました。
自己概念と体験の統合が上手くいかず、自己一致が出来ていない状況です。
自己一致出来ていないということは、CLはモヤモヤしたままですよ。
CL25
そうですね、ボーイフレンドもいますし、働き方、雰囲気が楽しかったんですね。
まずは海外で働きたいなという気持ち・・・モヤモヤしているというかあるので。
CC25
あの~、そのボーイフレンドは向こうの方なんですか。
CL26
そうですね、アメリカの方ですね。
CC26
そうですか、実際に留学をして凄い楽しかった思い出というのは
一つの宝物になっていると思うんですね。
ただ、留学と仕事というスタンスだったら、
またその中に生活というものが入ってくると違ってくると思うんですね。
それこそライフスタイル、宗教的なものやその土地の文化ということも
あると思うんですけどその辺については考えられたことってあるんですか。
CL27
アメリカなのでやっぱり文化的背景というか、
人種のやつとか複雑なのはなんとなく分かりますけどね。
CC27
その辺はやっぱりお母様に説得する意味で、必要な問題かなと思いますね。
その上で、実際に海外で働きたいという気持ちになるんじゃないかなと思いますね。
その辺の気持ちっていうのをそれこそ口で言うのもいいんでしょうけど、
実際に書き出してみると自分の気持ちが整理出来るんですね。
だからまずはそれで、どうして海外で働きたいのかなという気持ちから、
再燃した気持ちを大切にしたいということですので、まずはそこから、
私もそこからお話を一緒にしていきたいと思いますので、では次回までにね、
ちょっと時間もないので書き出してきて頂いて、
それで一つ一つ検討していきませんか。
CL28
はい、そうですね。一回まず気持ちの整理をして、考えたいと思いますね。
CC28
では次回、一週間後にこの時間にお会いしたいと思いますがいかがでしょうか。
CL29
分かりました、はい、ちょっと考えてきます。
ありがとうございました。
CC29
よろしくお願いします。ありがとうございます。
ピピピピピ・・・。
ここで時間切れとなりました。
ここから、口頭試問です。
口頭試問
ここから口頭試問のロールプレイです。
試験官(以下SIKと表記)
キャリアコンサルタント(以下CCと表記)
確認ポイント(以下KA)
SIK1
この相談者の相談したい問題点とは何でしたか。
CC1
はい、留学したアメリカの方での文化に触れ、
海外で働きたいと思ったのだけども、母親の反対もあって
国内の方で仕事を探してらっしゃったんですけども、
どうしても海外で働きたいという気持ちが再燃してこられて
どうしたらいいか分からないというのが問題だったと思います。
「一貫性と非言語的スキル」
KA
ここは主訴ですね、論述試験でいうと(1)に該当します。
私は冒頭でCLが言う主訴(初期設定)を要約して、
CLに必ず伝え返して下さいと教えます。
CLが何の相談に来たのか自己理解できるように要約して伝え返す意味と、
自分が覚えておいて最後の口頭試問できちんと言えるようにする意味があります。
※答え方はキャリコン義塾テキストⅠのp.2と16、Ⅱのp.6を参照
ここでは、正確に要約出来て、CL視点での問題把握がしっかり出来ています。
SIK2
では、キャリアコンサルタントとして考える相談者の問題点は何ですか。
CC2
キャリアコンサルタントとしてクライエントの問題点としては、
やはり海外で働きたいという気持ちだけが実際にどういうライフスタイルですとか、
留学と仕事は違うというようなところがあまり考えてらっしゃらないことと、
お母様としっかりお話合いがされていない、話し合いをしても
どうせ反対されると最初から諦めているとこっていうところもありますし、
自分自身海外で働くにはどんなスキルですとか、
どういう風なスタイルでやっていけばいいのかという自己理解、
また、働く仕事に対して仕事理解というところが非常に希薄なところがあり、
また自分自身がどうしていいか分からない
自己効力感が非常に無くされていますので
そういうところが問題じゃないかなと思いました。
「CC視点の問題把握」
KA
ここは我々CCの見立て、問題把握力、論述試験(2)に該当します。
どうしてCLは相談に来たのか、何を一番不安に感じていて、
何を一番やりたいのか、いわゆる4S点検(リソース)が
整理出来ない状態にあり、行動を起こせないことが問題です。
※答え方はキャリコン義塾テキストⅠのp.3と16、Ⅱのp.6を参照
それと、口頭試問では、自分を客観的に評価できるかどうかが試されます。
もう少し簡潔に分かりやすい応答を心がけてズバッと要約して伝えないと、
問題把握が絞れていないような応答になりがちで、
良い印象を与えることができないかもしれません。
たくさんの問題点を把握しているのは良いことなのですが、
優先順位をつけて問題評価することは1級試験の論述試験で必要ですね。
※キャリコン義塾テキストⅠのp.17を参照
SIK3
では、相談者とのリレーション、関係構築はうまく出来たと思いますか。
CC3
はい、お話を丁寧に聞いていくことによって、
自分自身があまりお母さんと話し合いをしてこなかったなとか、
そういうことにも気づきっていうのが、自己理解を促すことが出来たので
関係構築はうまく出来たなと思います。
「何を言わせたか」
KA
ここでは自分の関係構築力についての評価を客観的に分析します。
もちろん、出来たと言ってください、出来なくとも!(笑)
そして、自分との関係構築が出来ていく過程で、
CLがどのように変わったのか・・・変容させることができたかですね。
それを具体的な言葉を引用して答えます・・・何を言わせたかですね。
これを客観的に評価して、
「客観的に評価できています!試験官」とアピールします。
※キャリコン義塾テキストⅠのp.12と17、テキストⅡのp.12を参照
SIK4
今のロールプレイで良かったところ、
悪かったところを言ってください。
CC4
はい、今のロールプレイで良かったところは、
しっかりと丁寧にお聞きすることによって傾聴をしていくことで
いったん萎えていたCLさんの自己効力感を上げることが出来たことと、
自己理解を促すような傾聴が出来たことが良かったと思います。
悪かった点というのは、後半部分で自分自身が割合に喋りすぎて
リードする面がありましたので、
もう少し最後の部分でCLさんが海外に行く気持ちっていうのが、
まだ再燃した気持ちっていうのがなんとかしないことには
前へ進めないというところがお聞きして引き出すことが出来ましたので、
その部分においてもう少し早い段階でそのことをもう少し丁寧に出来ていれば
もう少し早く方策に行くことが出来たのではないかと思いますので、
以後、時間の配分とかをお聞きしながらやっていくのが課題だと思います。
「自己評価」
KA
システマティックアプローチをさかのぼって確認します。
方策のコミットメントが出来ていない→ 方策→
コミットメント→目標設立→問題評価という順に逆算して、
どこが出来ていなかったというのを構成的に振り返るといいでしょう。
例えば、具体的な方策まで詰められなかったということは、
目標合意や問題把握がコミットメントされていないことが
真の原因かもしれないのです。
※キャリコン義塾テキストⅠのp.17、Ⅱのp.7を参照
「その部分においてもう少し早い段階でそのことを
もう少し丁寧に出来ていれば、もう少し早く方策に行くことが出来た」のは、
どこのどういった部分が出来ていなかったためなのでしょうか?
こういった客観的な評価が明確化されることで、
試験官の評価も良くなると思います。
SIK5
では、次回の相談機会があればどんな支援を行いますか。
CC5
まず課題として出させて頂きました海外での働き方という部分に関しましては、
気持ちを共感し更にラポールを進めて、実際にどういう求人があるのかどうか
と同時にお母様に対しても納得の行く説明でもって、
海外で働けるというようなところを、気持ちをお伝えしていく風な
訓練というのをやって行きたいと思います。
それで積極的に自分自身がよりいい道を進めるような支援を
継続的に進めて行きたいと思います。
SIK6
では最後になりますが、
悪かったところについて今後どんな勉強をしていきたいですか。
CC6
はい、例えばですね、意思決定という決定論におきましても
常にAかBかということだけではなくて、もっともっと方策というものをですね、
引き出せるように傾聴ですとか、あとは積極的なかかわり技法によって
CLさんの言葉というのを最大限に引き出せるような技法というのを
意識して行きたいと思います。
「試験官の質問の意図を汲む」
KA
相談支援で出来なかったところ、CCが今後勉強すべき課題、
自己研鑽について聞かれています。
※キャリコン義塾テキストⅠのp.17、Ⅱのp.7を参照
SIK7
はい、では試験の方は以上です、お疲れ様でした。
CC7
ありがとうございました。
おわりに
【19回キャリコン2級検定/仮想ロールプレイケース1まとめ】
ver.3のまとめです。
今回も実際のロールプレイを基に、
キャリアカウンセリングのスキルをご紹介しました。
このCC役の方の問題点、傾向としては、
問題解決思考が強い情報提供優先の「指示優先型」です。
コンサルタント傾向が強いとでも申しましょうか・・・。
キャリコンとしての経験値が高いからこそ、知識があるからこそ、
教示的になるし、情報提供したくなるものです。
それと、傾聴が下手なわけではないのですが、
前半部分で感情への応答ではなく
「どんな風に反対されたんですか」
「語学力というのもかなり磨かれたわけですか。」
「ちなみにTOEICはおいくつなんですか。」などの問いかけが、
状況や環境に焦点を当てているので、問題の核心を掴むための
リレーション(関係構築)が不十分に感じます。
マイクロカウンセリングの「かかわり技法」で共通して言われている
「心の枠組みにそった傾聴」が出来ていないと言えるかもしれません。
おそらく実務で相談業務に携わっているため、
こういった「傾向やクセ」が染みついている可能性があります。
自分では出来ているつもりの方も多いので
俯瞰的かつ客観的に分析して頂きながら指導しています。
見えないものを見るスキル
それと、大切なことがもう一点・・・、
このCLの意思決定にコミットメントしていないと思いませんか?
これはなぜかというとCLの一番の気持ち、やりたいこと、
いわゆる「真意」が絞り切れていないからです。
人は生まれながらに「制約」や「限界」を「思いこむ」ことで、
環境や阻害要因のせいにするのです、意識・無意識に関わらず・・・。
今回のCLには「母親の反対」「日本の働き方が合わない」
という環境要因や本人の理想を邪魔する阻害要因というものが存在します。
それを取り除いてあげなければCLが本当は何をしたいのか、
どうしたいのか・・・それを把握することは出来ないと考えます。
例えば、
「母親の反対がなかったしたら、貴方はどう考えましたか?」
「日本の働き方が合っていたとしたら、海外に行きたいと思いますか」
この2つの質問で阻害要因を消すことで、CLが本心に気付き、
目標設立と、コミットメントにかなり近づくのではないでしょうか。
言語的に聴いて考えさせてから確認して、
自分の口で主体的に言わせてあげることですね。
本人が悩んでいる「阻害要因」、「環境要因」という
見ているものを見えないように取り除くことで、
本人にすら見えないものが見えてきます。
多くの人はこのような目の前の環境要因に捕らわれ
本当にやりたいことの意思決定が出来ていないのですから。
今回のロールプレイでは正直、これが足りないですね。
これが、CLがどうしたいのかが見えない曖昧さだと私は感じます。
口頭試問は応答が少し長いのですが問題評価などは適切なので、
あとは目標設立からの方策、それらのコミットメント、
合意形成、いわゆる詰めの段階まで来ているCC役の方だと思います。
そのためにも、ロジャーズ氏の共感的理解や自己一致の概念をもって、
関係構築と問題の深堀をしていくことを忘れないでほしいです。
これが出来ないとCLは元気になってくれませんし、
モヤモヤしたままになってしまいます。
これらも含めて逐語録だからこそ分析できますので、
ロールプレイ練習で録音した際は逐語録にして
自己分析してみるのもアリですね。
だから試験では録音しているのでしょう。
一見、良さそうなキャリアコンサルティングでも
実践的な理論や体系は出来ているのか見極める必要がある・・・と。
キャリアコンサルティング・カウンセリング方法は無限にあるので、
正しいか正しくないかではありませんが、
少なくとも私はこういった点に注意しながら、
カウンセリングステップを進めて合格しました。
今回はちょっと細かい専門的な話が多くなりましたが、
試験やコミュニケーションに必要なノウハウと
アドバイスを簡単にご説明しました。
たぶんキャリアコンサルティングを知らない方も、ああ~なるほど、
確かにそうかも!と感じた方もいるかもしれません。
マネージメントされている方々も一つでもスキルを覚えておくと、
部下の相談、人事面談や目標管理シート作成等で役立つと思います。
本当にやりたいことが出来れば仕事の成果やモチベーションは上がり、
長期的なキャリアパスが描けますから、段階的な目標も設定しやすいです。
相手の真意を引き出して心をスッキリさせることが出来れば、
非指示的に導くという高度なコミュニケーションが可能となります。
「そんなの難しいよ!」
「うちの会社ではそんなの無理!」
これも思い込みや環境要因の一つかもしれません、気を付けましょう。
こういうスキルを身に着けたい人事・採用担当者や
管理者の方からの応募や研修依頼もお待ちしています。
単純に聞き上手になりたい方には役立つので、
良いかもしれません(`・ω・´)ゞ
それにしても文章に起こして逐語録としてまとめると面白いですね。
どこがどのように出来ていないのか、
物凄く分かりやすくて私自身も勉強になりました。
こういう知識やスキルを世の中に役立てるチャンスが欲しいものです。
よーし!まずはそういった未来に向けて頑張ります!!
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お問い合わせお待ちしております!
もちろん、自分が本当はどうしたいのか分からない方、客観的に知りたい方、
キャリアプランの相談もこちらまで!
本日もお忙しいところ、
お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
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合わせてお読み頂けると大変嬉しいです。